仕様です、それバグじゃないです

技術や制度を「つまりこういうこと」で読み解くブログ。たまに脳が混線する奇書も紹介します。

原発再稼働を巡る“分断”をしろくまと読み解く:安全・電気代・未来へのリアルを全部まとめてみた

🐻原発再稼働、「賛成か反対か」でフリーズする前に

――しろくまと学ぶ「分断」の正体

原発再稼働、賛成ですか?反対ですか?」

…はいここで、
・家族会議が険悪になる
SNSタイムラインが炎上する
しろくまがそっと湯のみを置く

くらいには、空気がピリつくトピックです。

でも、
「賛成 vs 反対」だけで語るから余計にこじれる
という面もかなり大きいんですよね。

この記事では、

  • なぜこんなに分断されるのか

  • そもそも原発再稼働って何が争点なのか

  • 科学的・経済的なデータはどうなっているのか

  • 誰が得して、誰が損をすると思われているのか

を、できるだけフラットに・ギャグ多めで・しかし中身はガチで整理していきます。


1:そもそも「原発再稼働」って何の話?

ざっくりいうと、

福島第一原発事故で止まった原発を、条件付きでまた動かすかどうか」

を巡る議論です。

  • 2011年の福島第一原子力発電所事故後、
    日本国内の原発は一度すべて停止しました。

  • その後、より厳しい新規制基準が整備され、
    審査に通った原発から順に「また動かしてもいいよ」という仕組みになりました。

2024年時点では、

政府のエネルギー基本計画では、
2030年度に電源構成の20~22%を原子力でまかなうという目標も掲げられています。

しろくま的に訳すと、

「止めたままにしておくには電気もお金もキツい。でも、また動かすの怖くない?」

という、
お財布と安全の板挟み問題です。


2:なぜここまで分断が深いのか?感情レベルの話

1. 「取り返しのつかなさ」がケタ違い

  • 大事故が起きたときの被害が広域・長期・世代をまたぐ

  • 「ごめん」で済まないどころか、何十年も土地に戻れない可能性

福島の事故では、今もなお

  • 帰還困難区域

  • 廃炉作業の長期化

  • 被災者の生活再建の問題

など、「終わっていない現実」が続いています。

「もう二度と同じことは嫌だ」という感情は、
数字よりずっと強くてあたりまえです。

2. 「恩恵」と「リスク」を負う人がズレている

  • 恩恵を受ける人

    • 都市部の大口需要家(工場・オフィス)

    • 全国の電力消費者(電気料金・安定供給)

  • リスクを直接負う人

    • 原発立地自治体の住民

    • 周辺の農業・漁業・観光業

しろくま的表現をすると、

「都会でエアコン快適、
もし事故ったら地方の人が避難・風評被害でボコボコ」

という構図が意識されやすく、
**「俺たちの命と生活と引き換えに都会が涼むの?」**という怒りにつながります。

3. 「信頼残高」がマイナススタート

  • 事故前の「安全神話

  • 事故後の情報隠しや説明不足への不信

  • 東京電力ホールディングスや行政への追及報道

これらが積み重なって、

「今度こそ安全です」は、
信用残高ゼロどころかマイナス口座からの再スタート

になっているのも、大きな分断要因です。


3:推進派がよく言う「再稼働のメリット」

ここからは、賛成側・反対側の論点をできるだけフェアに整理します。
まずは「動かしたい派」。

1. エネルギー安全保障(エネ安)

  • 日本はエネルギーの多くを輸入に依存

  • ロシアのウクライナ侵攻後、LNGなどの価格高騰を経験

→ 「安定供給&価格の安定のため、
  原発という“国内で作れる大きな電源”が必要だ

というロジックです。

2. 脱炭素・温暖化対策

  • 原発は運転中のCO₂排出が非常に少ない

  • 既存の原発を動かすことは、石炭やLNGよりCO₂削減効果が大きいとするライフサイクル分析も多い

→ 「再エネだけでは不安定だから、
  原発も含めた“ミックス”で脱炭素すべき

という主張。

3. 電気料金と産業競争力

  • 火力発電用燃料の輸入コスト高は、電気料金に直撃

  • 電気料金が上がると、

    • 家計が苦しくなる

    • 電力多消費産業の国際競争力が落ちる

→ 「再稼働で発電コストを抑えないと、
  企業が海外に逃げて雇用も失われる

という“経済安保”的な論理もあります。


4:慎重派・反対派が重視する「リスク」

一方、慎重・反対派はこんなところを重く見ています。

1. 事故リスクはゼロじゃない

  • 新規制基準は世界的に見てもかなり厳しいと言われるが、
    「規制=絶対安全」ではない。

  • 地震津波・火山など、多重リスクのある国土

「低確率×甚大被害」の組み合わせが怖い、という議論です。

2. 廃炉・廃棄物の長期コスト

  • 廃炉には数十年規模の時間と巨額のコスト

  • 高レベル放射性廃棄物の最終処分地は、日本ではまだ確定していない

「再稼働しても、後始末は“未来の子孫”にツケ回しでは?」

という倫理的な問題意識。

3. 避難計画の現実性

  • 机上の計画と、実際の高齢化した地域社会での避難のギャップ

  • 車がない世帯、要介護の高齢者、病院・施設の避難方法など

日野行介さんの『原発再稼働 葬られた過酷事故の教訓』などは、
この避難計画の実態をかなり厳しく検証しています。


5:科学・データから見えること(ざっくり)

ここは「どちらの陣営の味方をする」ではなく、
よく出てくる数字を整理しておきます。

CO₂排出の比較(ライフサイクル)

各種国際機関のメタ分析では、

  • 原子力の1kWhあたりCO₂排出は、

    • 再エネ(風力・太陽光)と同じオーダーか、やや多い程度

    • 石炭・石油・ガス火力よりは桁違いに少ない

という結果が多いです。

「温暖化だけ」を指標に見ると、
原発は“悪役”というより低炭素電源の一つ、という位置づけになります。

ただし、

などは、モデルや前提の置き方で評価がかなり変わります。

電気料金への影響

  • 福島事故後の原発停止で、
    燃料費増大が貿易赤字を押し上げたという分析が多くあります。

  • ただし、

    • 再稼働でどの程度電気料金が下がるのか

    • 安全対策投資や保険的な備えをどこまで費用に入れるか

によって結論は揺れます。

しろくままとめ:
原発を全部止める」のもコスト、
「動かす」のも別の形のコスト。
“どのコストを、誰が、どれだけ負担するか” の選択です。


6:誰が得して、誰が損をすると思われているのか?

得をすると見られがちな人たち

  • 電力会社(発電設備を遊ばせずに済む)

  • 原発関連メーカー(タービン・制御装置・建設)

  • 一部の政治家・官僚(「原子力ムラ」と呼ばれる旧来ネットワーク)

  • 原発立地自治体(交付金・雇用・関連ビジネス)

損をすると感じている/感じやすい人たち

ここで注意したいのは、

「利権があるから全部悪い」「反対派も利権でやってる」

といった陰謀論モードに入ると、
議論が一瞬でカオスになる
こと。

確かに、

など、お金の流れの問題は存在しますが、
「全部それで説明しよう」とするのは危険です。

ここは、

「利害関係は確かにある。
でも、それ“だけ”で片付けない」

というスタンスの方が、現実的で健全かな、としろくまは思います。


7:これからどうなる?日本のエネルギー戦略の中で

1. 政府方針:とりあえず「原発も使う」路線

  • エネルギー基本計画では、
    2030年に**原子力20~22%、再エネ36~38%**を目標としています。

  • さらに老朽化原発の運転延長・次世代炉(高温ガス炉や小型モジュール炉など)の検討も進行中。

2. 現実の壁

しかし、

  • 新規制基準への対応工事の長期化・費用膨張

  • 地元同意の難航

  • 住民の避難計画の課題

などから、
2030年ターゲットを達成するのはかなり厳しいという指摘が多いです。

3. 再エネ・省エネとの兼ね合い

  • 再エネはコスト低下が進んでいるものの、
    系統制約・出力変動などの課題もあり、
    原発を全部やめて、全部太陽光で」は現実的ではないという見方が主流。

  • 一方で、

    • 省エネ

    • 需要側のデマンドレスポンス

    • 蓄電池・グリッド強化

などで「そもそも必要電力量を減らす」選択肢もあります。


8:しろくま式・自分の頭で考えるためのチェックリスト

最後に、「賛成か反対か」より前に、
自分なりの判断軸を整理するためのチェックリストを置いておきます。

✅ 1. どのリスクを、どこまで許容できるか?

  • 地震国に原発を持つリスク

  • 事故時の避難や賠償の現実性

  • 廃棄物の長期管理

「ゼロリスク」は存在しません。
許容できるリスクの量と、その配分の仕方をどう考えるか。

✅ 2. 電気代と産業競争力をどこまで重視するか?

  • 「電気代は多少高くても安全重視」なのか

  • 「雇用維持・産業維持を最優先」なのか

  • その中間なのか

✅ 3. 温暖化対策とのトレードオフをどう見るか?

  • 原発を使わない場合、代替のCO₂削減策をどう組み立てるか

  • 再エネ・省エネ・火力の高効率化などとの組み合わせ

✅ 4. 信頼できる情報源をどこに置くか?

  • 行政・規制当局

  • 電力会社

  • 原発団体

  • メディア・専門家

どこにもバイアスはありますが、
複数の立場の情報を見比べるクセをつけておくと、
「扇動されにくい自分」を守れます。


🐻しろくまのひとこと

原発は危険だから全部やめろ!」
「いや、安全だからどんどん動かせ!」

と叫び合うよりも、

じゃあ、やめたとき/続けたときの
電気代・CO₂・事故リスク・地域の生活、
それぞれ具体的にどう変わるの?

という**“現実の家計簿レベル”の話**まで落とせるかどうかが、
分断を少しだけマシにする鍵だと思います。

しろくま的には、

どちらも“重い宿題”を抱えた選択肢であって、
魔法の正解はまだ誰も持っていない、という前提で
一緒に考え続けるしかないね…というスタンスです。


📚 原発再稼働・日本の原子力政策を学ぶためのおすすめ書籍(Amazonで購入可能)

※すべて日本語・現時点でAmazon上で購入可能なものを確認しています(紙/Kindleいずれか)。

1. 『原発再稼働 葬られた過酷事故の教訓』(日野 行介/集英社新書

  • 福島事故後、「なぜ原発再稼働に向かってしまったのか」を
    安全規制・避難計画の実態から徹底調査した一冊。

  • 「再稼働慎重派」の視点が強めですが、
    行政や規制の仕組みを知る上で、資料価値が高いです。

2. 『原発再稼働「最後の条件」 「福島第一」事故検証プロジェクト 最終報告書』(大前 研一 他/小学館

  • 福島第一の事故を工学的に検証し、
    「もし動かすなら最低限ここまでは必要」という条件を整理。

  • 技術寄りですが、図や写真も多く、
    「素人でも“何が問題だったのか”を掴みたい人」向け。

3. 『「脱原発」への攻防 追いつめられる原子力村』(小森 敦司/平凡社新書

  • 原子力ムラ」と呼ばれる、
    政治・官僚・電力会社・メーカーのネットワークを追いかけたルポ。

  • 脱原発寄りの筆致ですが、
    「なぜここまで信頼が失われたのか?」を考える材料になります。

4. 『原発と日本の未来 ― 原子力は温暖化対策の切り札か』(石川雅彦岩波新書

  • 温暖化問題と原発の関係を、
    データと国際比較を交えて整理した本。

  • 「CO₂削減 vs 原発リスク」を冷静に考えたい人向け。

5. 『テレビと原発報道の60年』(七沢 潔/フィギュール彩)

  • マスコミ、とくにテレビ報道が
    どう原発を扱ってきたかを振り返る一冊。

  • 「世論がどう作られてきたのか?」というメタ視点を持つのに役立ちます。