
当たり前を支える技術 第19回
QRコード決済は、なぜ「あの四角」を読むだけで支払えるのか?
――QRコード・スマートフォン・決済事業者・店舗システムが「画像をお金の入口」に変える仕組み
コンビニ。
ドラッグストア。
飲食店。
あるいは、
小さな個人商店。
会計は、
1,280円。
スマートフォンを取り出す。
アプリを開く。
QRコードを表示。
店員さんが、
ピッ。
「支払い完了。」
あるいは、
店に置かれた、
白黒の四角を、
自分のスマートフォンで読み取る。
金額を入力。
確認。
「支払い完了。」
……。
ちょっと待ってください。
あの、
白と黒の、
四角い模様。
あれのどこに、
1,280円が入っているのでしょう?
もちろん、
入っていません。
QRコードを、
印刷した紙を、
ハサミで切ってみても、
千円札も、
小銭も、
出てきません。
それどころか、
店によっては、
ただ印刷しただけのQRコードが、
レジの横に、
置いてある。
電池もない。
通信機能もない。
CPUもない。
それなのに、
スマートフォンで読み取ると、
「支払い」
が始まる。
考えてみると、
かなり不思議です。
そこで今回は、
この、
「ただの白黒模様が、
なぜ、お金の入口になるのか?」
を調べます。
1.まず結論――QRコードは「お金」ではない
最初に、
一番大事なところ。
QRコードそのものは、
お金ではありません。
そして、
一般的なQRコードの中に、
銀行口座そのものや、
紙幣のようなものが、
詰め込まれているわけでもありません。
QRコードは、
「情報を機械が読み取れる形にしたもの」
です。
たとえば、
WebサイトのURL。
商品番号。
文字。
識別番号。
さまざまなデータを、
白黒の小さなマスの配置として、
表現できます。
QRコードには、
数字、
英数字、
バイトデータ、
漢字などを格納でき、
国際規格として標準化されています。
つまり、
QRコード決済を、
ものすごく単純化すると、
こうです。
QRコード
↓
必要な情報を読み取る
↓
スマートフォンや店舗システムが、
決済サービスへ問い合わせる
↓
決済処理
↓
支払い完了
つまり、
本当にお金を動かしているのは、
「四角い画像」
ではありません。
その後ろにある、
決済システム。
です。
2.QRコードは「住所札」に近い
第14回。
宅配便の記事で、
こんな表現をしました。
「住所は、物理世界のアドレス。」
荷物を、
どこへ届けるのか。
その場所を、
住所が示している。
QRコードも、
少し似ています。
ただし、
QRコード決済では、
サービスや方式によって、
コードに含まれる情報は異なります。
店舗や決済事業者などを、
識別するための情報。
取引に必要な情報。
場合によっては、
金額に関係する情報。
など。
つまり、
QRコードは、
「決済システムの、
どこへアクセスすればよいかを示す入口」
として働く。
「お金そのもの」ではない。
「お金を動かす仕組みへの入口」。
ここが、
今回の第一ポイントです。
3.そもそもQRコードとは何者?
QRコードは、
1994年に、
デンソーウェーブの前身で開発された、
二次元コードです。
その後、
JIS規格、
ISO国際規格などとして標準化され、
広く利用されるようになりました。
デンソーウェーブは、
標準化されたQRコードについて、
保有する特許権を行使しない方針を示しています。
もともとは、
「決済専用」
として生まれたものではありません。
物や情報を、
効率よく識別する技術。
それが、
スマートフォン時代になって、
決済にも、
使われるようになった。
つまり、
QRコード決済は、
QRコードという情報技術
と、
スマートフォン
と、
インターネット
と、
金融・決済システム
が、
合体して生まれた仕組みなのです。
4.なぜ、あの模様を読める?
QRコードを、
よく見てみましょう。
白。
黒。
小さな四角。
たくさん並んでいる。
さらに、
大きな四角い模様が、
角のあたりにあります。
あれは、
飾りではありません。
QRコードには、
位置を検出するためのパターンがあり、
これによって、
360度どの方向からでも、
高速に読み取りやすくなっています。
だから、
スマートフォンを、
完全に水平にして、
1ミリ単位で位置を合わせなくても、
読み取れる。
さらに、
QRコードには、
誤り訂正機能があります。
少し汚れた。
一部が傷ついた。
そんな場合でも、
一定範囲なら、
元のデータを復元できるようになっています。
つまり、
あの白黒模様。
見た目以上に、
かなり、
よく考えられている。
図解 Ver.179
QRコードは何をしている?
QRコード
↓
白黒のマス
↓
データとして読み取る
↓
アプリが内容を解釈
↓
決済システムへ接続
コピー:
「QRコードは、お金ではない。情報の入口。」
5.実はQRコード決済には「逆向き」がある
ここからが、
面白いところ。
QRコード決済。
いつも、
同じ方法だと思っていませんか?
実は、
大きく分けると、
二つあります。
「客がQRコードを見せる」
方式。
そして、
「店がQRコードを見せる」
方式。
正式には、
利用者提示型。
CPM
Consumer Presented Mode。
そして、
店舗提示型。
MPM
Merchant Presented Mode。
経済産業省の資料やキャッシュレス推進協議会の仕様でも、
この二つが区別されています。
6.方式その1――「私のコードを読んでください」
コンビニなどで、
よく見る方式。
スマートフォン。
↓
決済アプリ。
↓
QRコードやバーコードを表示。
↓
店員さんが、
レジのスキャナーで、
ピッ。
これが、
CPM。
利用者提示型です。
この場合、
コードを見せるのは、
客。
店側が、
読み取ります。
概念的には、
スマートフォンに表示されたコードを手掛かりに、
決済システムが、
「誰の決済なのか」
など、
取引に必要な情報を結びつける。
そして、
店舗側の情報。
金額。
利用者側の情報。
などを組み合わせて、
決済事業者側で、
取引を処理する。
図解 Ver.180
CPM――利用者が見せる
📱利用者
↓
QR/バーコード表示
↓
🏪店舗が読み取る
↓
店舗システム
↓
決済事業者
↓
取引処理
↓
支払い完了
コピー:
「客が見せて、店が読む。」
7.方式その2――「店のコードを読んでください」
今度は、
逆。
店のレジ横に、
QRコード。
客が、
スマートフォンを出す。
アプリを開く。
QRコードを、
カメラで読む。
これが、
MPM。
店舗提示型です。
つまり、
店が見せる。
客が読む。
小さな飲食店。
個人商店。
イベント。
屋台。
こうした場所で、
見たことがある人も、
多いでしょう。
経済産業省の資料でも、
CPMはPOSを備えたコンビニやスーパーなど、
MPMは小規模店舗で利用されることが多いと整理されています。
図解 Ver.181
MPM――店舗が見せる
🏪店舗
↓
QRコードを提示
↓
📱利用者が読む
↓
店舗情報等を取得
↓
金額確認・入力など
↓
決済事業者
↓
支払い完了
コピー:
「店が見せて、客が読む。」
8.同じQR決済なのに、向きが逆
整理すると、
こう。
CPM
客。
「これが私です。」
↓
店が読む。
MPM
店。
「ここへ払ってください。」
↓
客が読む。
面白いですよね。
同じ、
QRコード決済。
でも、
情報を見せる側が、
逆。
ここを理解すると、
QRコードの役割も、
見えてきます。
QRコードそのものが、
支払いをしているのではない。
「誰?」
「どの店?」
「どの取引?」
そうした情報を、
決済システムへ渡す、
「受け渡し役」
なのです。
9.店に置いてある紙のQRコードが、なぜ使える?
ここが、
今回、
一番不思議なところかもしれません。
レジ横。
小さなプレート。
そこに、
QRコード。
電源コード、
なし。
Wi-Fi、
なし。
Bluetooth、
なし。
電池、
なし。
なのに、
支払いできる。
なぜ?
答えは、
単純です。
そのQRコード自身が、
通信する必要がないから。
QRコードは、
情報を、
印刷しているだけ。
通信するのは、
あなたのスマートフォン。
です。
スマートフォンが、
店のQRコードを読む。
↓
そこから、
店舗を識別する情報などを得る。
↓
スマートフォンが、
インターネット経由で、
決済事業者へアクセスする。
↓
決済を指示する。
だから、
紙でもいい。
「紙は、入口を示しているだけ。」
なのです。
10.これは、かなり画期的
考えてみてください。
従来、
電子決済を導入しようとすると、
店側に、
決済端末。
通信回線。
POSとの接続。
機器。
などが必要になる場合があります。
でも、
静的な店舗提示型QRコードなら、
店側は、
極端に言えば、
「印刷したQRコード」
を置ける。
経済産業省の調査では、
静的MPMは、
利用者のスマートフォンを使う構成で、
店舗側の停電やLAN通信障害時にも利用可能となり得る点が整理されています。
もちろん、
決済サービス側や、
利用者側の通信などが、
正常に動いていることは必要です。
でも、
店側の入口を、
非常に軽くできる。
これは、
大きい。
11.なぜ小さな店でも導入できる?
ここで、
第15回。
コンビニの記事を、
思い出してください。
コンビニは、
なぜ、
小さな店舗なのに、
巨大なサービスを提供できる?
答え。
「巨大な仕組みを、
店の外へ置いたから。」
QRコード決済も、
かなり似ています。
店側に、
巨大な金融システムを、
置く必要はない。
銀行。
決済事業者。
認証。
データセンター。
ネットワーク。
アカウント管理。
それらは、
外側にある。
店側は、
「入口」
だけを持てばいい。
場合によっては、
その入口が、
一枚のQRコード。
だから、
小さな店でも、
巨大な決済インフラへ、
接続できる。
「小さいのは、機能が少ないからではない。
巨大な仕組みを、外へ置いたから。」
また、
同じ答えに、
戻ってきました。
12.では、QRコードを読んだ瞬間に、お金が動く?
ここも、
注意。
QRコード。
読み取り。
↓
即、
銀行口座から現金が移動。
と考えると、
単純すぎます。
QRコード決済サービスには、
さまざまな、
支払い元があります。
事前にチャージした残高。
銀行口座。
クレジットカードとの連携。
その他、
サービスが用意する方法。
経済産業省の調査でも、
銀行口座、
クレジットカード、
現金チャージ、
キャリア決済など、
複数の資金供給方法が整理されています。
つまり、
QRコードは、
「どこからお金を出すか」
そのものではありません。
ここを、
分けて考える必要があります。
13.QRコードは「入口」、支払い元は「奥」
たとえば、
同じQRコード決済でも、
利用者A。
事前チャージ残高。
利用者B。
銀行口座と連携。
利用者C。
クレジットカード等と連携。
ということがあり得る。
表側。
全部、
QRコード。
でも、
裏側。
お金の出どころが違う。
これ、
面白いですよね。
見た目では、
分からない。
つまり、
QRコードは、
決済手段そのものというより、
「決済サービスへ入るためのUI」
として見ると、
分かりやすい。
14.「画像をお金の入口にする」とは、こういうこと
今回の副題。
「画像をお金の入口に変える仕組み」
ここで、
意味が見えてきます。
QRコード。
↓
情報。
↓
アプリ。
↓
決済事業者。
↓
利用者アカウント。
↓
支払い元。
↓
加盟店への決済。
つまり、
白黒模様から、
直接、
お金が出てくるわけではない。
「情報」
から、
「決済サービス」
へ入り、
そこから、
「金融システム」
へつながる。
QRコードは、
金融システムへの、
「画像でできたドア」。
なのです。
図解 Ver.182
QRコードの後ろにあるもの
QRコード
↓
店舗/利用者などの識別情報
↓
スマートフォン・店舗システム
↓
インターネット
↓
決済事業者
↓
利用者アカウント
↓
銀行口座/残高/カード等
↓
加盟店への決済・精算
コピー:
「白黒の四角の後ろに、金融インフラがある。」
15.では「ピッ」のあと、何が起きる?
方式やサービスによって、
実際の処理は異なります。
そこで、
ここでは、
概念的に見てみます。
利用者。
1,280円の商品を購入。
↓
QRコードなどを読み取る。
または、
表示して店に読み取ってもらう。
↓
取引に必要な情報が、
アプリや店舗システムへ入る。
↓
決済事業者側へ、
「この取引を処理してください」
という指示。
↓
利用者のアカウント、
支払い手段、
取引条件などを確認。
↓
取引成立。
↓
利用者へ、
「支払い完了」
↓
店舗側でも、
「決済完了」
を確認。
つまり、
QRコードを読むことは、
「支払いそのもの」
というより、
「決済処理を始めるための情報入力」
なのです。
16.なぜ店側にも「支払い完了」が必要?
ここ、
重要です。
利用者のスマートフォン。
「支払い完了!」
では、
店員さん。
「はい、分かりました。」
これだけで、
いい?
もし、
利用者の画面だけを、
信用していたら?
偽の画面。
スクリーンショット。
別の画面。
見せられる可能性があります。
だから、
決済では、
店舗側でも、
取引成立を、
適切に確認できる仕組みが重要になります。
つまり、
「客のスマホに完了と出た」
ことと、
「店が決済成立を確認した」
ことは、
考え方として、
分けておいた方がいい。
これは、
第17回でも出てきた、
「離れたシステムの状態を、
矛盾なく合わせる」
という問題です。
17.QRコード決済は「二つの画面を一致させる」
利用者。
「1,280円払った。」
店。
「1,280円受け付けた。」
決済事業者。
「この取引は成立した。」
この三者の認識が、
一致する必要がある。
もし、
利用者だけ、
「払った」。
店は、
「受け取っていない」。
では、
困る。
つまり、
QRコード決済で重要なのは、
QRコードの読み取り精度だけではない。
「取引状態を、
みんなで一致させる」
こと。
ここまで来ると、
単なる、
画像認識の話ではありません。
立派な、
決済インフラ
です。
18.第17回「銀行振込」とつながった
銀行振込。
A銀行。
↓
B銀行。
離れた帳簿を、
矛盾なく書き換える。
QRコード決済。
利用者。
↓
決済事業者。
↓
店舗。
それぞれが、
同じ取引について、
「支払い済み」
という状態を、
共有する。
つまり、
見た目は、
QRコード。
でも、
裏側で重要なのは、
やっぱり、
「情報を一致させること」。
金融インフラは、
ここでも、
同じ問題と、
戦っています。
19.第18回「クレジットカード」とは何が違う?
前回。
クレジットカード。
テーマは、
信用。
今日。
商品を受け取る。
↓
後日。
支払う。
信用によって、
時間差を埋める。
では、
QRコード決済は?
ここで、
大事なこと。
「QRコード決済=後払い」
ではありません。
QRコードは、
あくまで、
決済サービスへ入る、
方法の一つ。
その奥で、
何を使って支払うかは、
サービスによって違う。
残高。
銀行口座。
カード。
その他。
つまり、
QRコードは、
「支払いのタイミング」ではなく、
「決済への入り方」
を表している。
図解 Ver.183
クレジットカードとQRコード決済の違い
クレジットカード
重要なのは、
「信用・後払い」
QRコード決済
重要なのは、
「コードを使って決済サービスへ入る」
その先の支払い元は、
サービスによって異なる。
コピー:
「QRは入口。お金の出どころは、その奥にある。」
20.QRコード決済は「支払い方法」なのか「入口」なのか
一般には、
もちろん、
QRコード決済という、
支払い方法として扱います。
それで、
問題ありません。
でも、
仕組みを理解するためには、
もう一段、
分解すると面白い。
QRコード。
情報を渡す方法。
↓
スマートフォン。
読み取る/表示する端末。
↓
決済アプリ。
利用者とサービスをつなぐ。
↓
決済事業者。
取引を処理する。
↓
銀行・カード・残高など。
価値の源泉。
つまり、
表側の、
「QRコード決済」
という一言の後ろには、
役割の違う、
いくつもの層がある。
21.「QRコード=口座番号」ではない
ここも、
注意。
QRコードを、
「銀行口座番号を四角い画像にしたもの」
と思うと、
違います。
QRコードに何を格納するかは、
用途や仕様によって異なります。
決済用コードでは、
店舗や決済事業者などを識別するための情報を含め、
システム側で、
取引を成立させるために使われます。
たとえば、
JPQRでは、
利用者提示型CPMと店舗提示型MPMの双方について、
統一技術仕様が定められています。
つまり、
QRコードの役割は、
「銀行口座を丸ごと見せる」
ことではない。
「決済システムが必要な情報を、
機械に読み取らせる」
ことです。
22.では、QRコードを写真に撮られたら危険?
ここは、
一律に、
「安全」
「危険」
とは言えません。
なぜなら、
QRコードには、
用途や方式の違いがあるからです。
店頭へ固定して置く、
静的なQRコード。
取引などに応じて生成される、
動的なコード。
利用者アプリに表示されるコード。
同じ見た目でも、
役割が違う。
だから、
「QRコードなら全部同じ」
ではありません。
そして、
QRコードそのものを、
「秘密を守る金庫」
と考えるのも危険です。
QRコードは、
基本的には、
情報を読み取るためのコード。
決済の安全性は、
アプリ。
認証。
通信。
決済事業者側の管理。
不正利用対策。
店舗側の確認。
など、
システム全体で作ります。
23.「偽QRコード」という問題
QRコードの便利さは、
「カメラで読める」
こと。
でも、
これは、
弱点にもなります。
もし、
本物の店舗QRコードの上に、
別のQRコードが、
貼られていたら?
利用者は、
見た目だけでは、
違いに気づきにくい。
だから、
店舗提示型では、
「そのQRコードは本当に店が提示したものか」
を確認することも重要です。
QRコードは、
便利な入口。
だからこそ、
「入口をすり替えられないこと」
も、
大切になります。
24.便利な技術ほど「入口」が狙われる
これは、
QRコードだけの話ではありません。
ATM。
偽画面。
フィッシング。
偽サイト。
カード情報。
アカウント乗っ取り。
金融システムが、
安全になればなるほど、
攻撃する側は、
真正面から、
巨大な金融システムを壊すより、
「人が触る入口」
を狙うことがあります。
QRコード。
スマートフォン。
ログイン画面。
SMS。
メール。
つまり、
セキュリティでは、
「巨大システムの中心」
だけでなく、
「利用者との境界」
が、
非常に重要なのです。
25.QRコードが少し汚れても読める理由
レジ横のQRコード。
長く使う。
少し汚れる。
印刷が、
かすれる。
それでも、
読める場合がある。
なぜ?
QRコードには、
誤り訂正機能があります。
デンソーウェーブによれば、
L・M・Q・Hの4段階があり、
レベルに応じて、
一定範囲のコードワードを復元できます。
一般的なレベルMでは、
約15%が目安とされています。
これ、
地味ですが、
かなり重要。
実世界では、
完璧な印刷物だけを、
読むわけではない。
汚れる。
傷つく。
傾く。
光が反射する。
だから、
現実世界で使える技術には、
「多少壊れても戻れる」
能力が必要になります。
……。
どこかで、
聞いた話ですね。
26.健康もQRコードも「壊れない」より「戻れる」
人体シリーズで、
何度も出てきた言葉。
「健康とは、
何も壊れていない状態ではなく、
壊れても戻れる状態。」
QRコードも、
思想としては、
少し似ています。
絶対に、
汚れない。
絶対に、
欠けない。
そんな世界を、
前提にしない。
少し、
壊れる。
↓
でも、
情報を、
復元できる。
もちろん、
人体とQRコードは、
まったく別のもの。
でも、
工学の世界でも、
「故障をゼロにする」
だけではなく、
「多少の故障を許容する」
という考え方は、
とても重要です。
文明を支える技術は、
意外と、
「壊れない技術」
より、
「少し壊れても使える技術」
で、
できているのかもしれません。
27.ただし、どんなQRコードでも読めるわけではない
誤り訂正。
便利。
では、
半分、
黒く塗りつぶしても、
大丈夫?
もちろん、
そんな単純ではありません。
損傷の位置や程度、
コードの設計、
読み取り条件などによって、
復元できない場合があります。
また、
QRコードの周囲には、
読み取りのための、
余白――
クワイエットゾーン
が必要です。
標準的なQRコードでは、
周囲に4モジュール分の余白が必要とされています。
だから、
デザイン重視で、
文字。
イラスト。
ロゴ。
などを、
無理に重ねると、
読み取りにくくなる場合があります。
つまり、
あの白黒四角。
自由に見えて、
ちゃんと、
「読めるためのルール」
がある。
28.標準化があるから、いろいろな機械で読める
ここも、
文明の面白いところ。
もし、
会社ごとに、
QRコードの形が、
全部違ったら?
A社のQRコード。
↓
A社専用カメラ。
B社。
↓
B社専用カメラ。
C社。
↓
C社専用。
これでは、
大変です。
QRコードは、
国際標準化されています。
だから、
さまざまな機器やソフトウェアが、
共通のルールに従って、
読み取れる。
ここで、
今回の主役が、
QRコードから、
少し変わります。
本当にすごいのは、
白黒模様だけではない。
「みんなが同じルールで読める」
こと。
つまり、
標準化。
です。
29.「規格」は、見えないインフラ
道路。
幅。
信号。
標識。
鉄道。
線路。
電気。
電圧。
通信。
プロトコル。
そして、
QRコード。
社会の巨大システムは、
「共通ルール」
がなければ、
つながりません。
規格は、
目に見えない。
でも、
規格があるから、
違う会社。
違う端末。
違う場所。
違うサービス。
それらを、
接続できる。
つまり、
「標準化もインフラ」。
なのです。
30.JPQRは何をしようとしている?
日本のコード決済には、
複数のサービスがあります。
それぞれ、
QRコード。
それぞれ、
仕様。
店側から見ると、
サービスが増えるほど、
対応が複雑になる可能性があります。
そこで、
キャッシュレス推進協議会が進めてきたのが、
JPQR。
コード決済の統一規格です。
JPQRでは、
CPMとMPM、
両方について、
統一技術仕様が定められています。
ここでも、
目的は、
似ています。
「違うサービス同士でも、
共通化できるところは共通化する。」
鉄道。
通信。
物流。
銀行。
決済。
巨大システムが成長すると、
必ずと言っていいほど、
「標準化」
が重要になってきます。
31.QRコード決済は「スマートフォンを決済端末にした」
ここで、
少し視点を変えます。
昔。
カード決済。
専用端末。
電子マネー。
専用リーダー。
QRコード決済。
何を使う?
スマートフォンの画面。
スマートフォンのカメラ。
つまり、
すでに、
多くの人が持っている機械を、
決済端末として使う。
これ、
かなり合理的です。
新しい専用機械を、
一人一台、
配る必要がない。
スマートフォンには、
すでに、
画面。
カメラ。
通信。
CPU。
アプリ。
本人認証機能。
などがある。
つまり、
QRコード決済は、
「スマートフォンという汎用コンピューターを、
金融インフラの端末にした」
とも言えます。
32.第2回「スマートフォン」とつながった
第2回。
スマートフォンは、
いったい何台の機械を、
飲み込んだのか?
電話。
カメラ。
地図。
音楽プレーヤー。
時計。
財布。
今回。
さらに、
分かりました。
スマートフォンは、
「決済端末」
まで、
飲み込んでいる。
しかも、
QRコードという、
単純な画像技術と、
インターネットを組み合わせることで、
専用機械がなくても、
巨大な金融システムへ、
接続できる。
33.第3回「インターネット」ともつながった
QRコードを読む。
一瞬。
でも、
QRコードだけでは、
決済できない。
その後、
スマートフォンから、
ネットワークを通じて、
決済事業者側へ、
情報が送られる。
つまり、
第3回。
インターネット。
これも、
後ろにいる。
QRコード。
スマートフォン。
インターネット。
決済事業者。
銀行。
カード。
店舗システム。
シリーズが進むほど、
以前の記事が、
どんどん、
つながっていきます。
34.第10回「電力網」までいる
さらに。
スマートフォン。
電池切れ。
どうなる?
決済アプリ。
開けない。
通信。
できない。
つまり、
QRコード決済は、
金融だけで、
動いているわけではない。
電力。
通信。
スマートフォン。
サーバー。
決済システム。
銀行。
店舗。
複数のインフラの上に、
乗っている。
これは、
現代社会の特徴です。
便利なサービスほど、
単独で存在していない。
「インフラの上に、
別のインフラを積み重ねる。」
そうして、
便利になっていく。
35.では、通信障害が起きたら?
QRコード。
目の前にある。
スマートフォン。
ある。
銀行口座。
お金もある。
でも、
通信できない。
決済事業者へ、
アクセスできない。
すると、
方式や状況によっては、
支払いできない。
第18回でも、
同じ話が出ました。
「お金を持っている」
ことと、
「今、支払える」
ことは、
同じではない。
現金なら、
通信がなくても、
手渡せる。
QRコード決済は、
非常に便利。
でも、
通信。
電力。
スマートフォン。
決済システム。
そうした、
複数のインフラに、
依存する。
36.ただし、QR方式によって依存関係も違う
ここは、
面白いところ。
すべてのQRコード決済が、
まったく同じ構成ではありません。
経済産業省の災害時調査では、
コード決済を、
動的MPM。
静的MPM。
CPM。
などに分け、
必要となる電源や通信環境の違いを整理しています。
たとえば、
店側に、
印刷した静的QRコードしかない方式なら、
店舗端末の電源がなくても、
利用者側のスマートフォンと通信環境などが生きていれば、
利用可能となる場合がある。
つまり、
同じ、
「QR決済」
でも、
障害への強さは、
構成によって違う。
これは、
インフラを見るとき、
とても重要な視点です。
「そのサービスは何に依存している?」
を、
考える。
37.便利さは「依存関係」とセット
スマートフォン一台。
QRコード。
簡単。
便利。
でも、
その簡単さは、
後ろ側へ、
複雑さを移した結果です。
利用者側。
スマートフォン。
OS。
アプリ。
通信。
本人認証。
事業者側。
アカウント。
決済処理。
不正検知。
サーバー。
ネットワーク。
金融側。
銀行。
カード。
資金移動。
精算。
店舗側。
加盟店管理。
売上確認。
POS連携。
会計処理。
表側。
「ピッ」。
裏側。
巨大。
また、
このシリーズの、
いつもの景色が、
見えてきました。
38.QRコードは「金融版リンク」なのかもしれない
インターネット。
Webページ。
リンクを押す。
↓
別のページへ、
移動。
QRコード。
カメラで読む。
↓
情報やサービスへ、
移動。
だから、
QRコードは、
現実世界に置かれた、
「リンク」
のようにも見えます。
ポスター。
看板。
商品。
チケット。
そして、
レジ。
現実世界にある物体から、
デジタル世界へ、
飛ぶ。
QRコード決済なら、
そのリンク先が、
「決済処理」。
つまり、
「現実世界に置かれた、
金融システムへのリンク」。
そう考えると、
あの白黒四角の役割が、
かなり分かりやすくなります。
図解 Ver.184
QRコードは「現実世界のリンク」
現実世界
🏪 店舗
↓
▣ QRコード
↓
📱 スマートフォン
↓
🌐 デジタル世界
↓
決済事業者
↓
金融システム
コピー:
「紙の四角から、デジタル金融へ。」
39.QRコードは「安い入口」を大量に作れる
リンク。
という考え方で見ると、
さらに面白い。
専用端末を、
大量に置く。
高い。
設置。
保守。
電源。
通信。
必要。
QRコード。
印刷。
貼る。
表示。
スマートフォンで読む。
もちろん、
決済システム全体は、
簡単ではありません。
でも、
「入口」
を作るコストは、
非常に小さくできる。
つまり、
QRコードの強さは、
超高性能な機械であることではない。
むしろ、
逆。
「ものすごく単純な入口を、
大量に作れる。」
こと。
これは、
インフラにとって、
大きな武器です。
40.「高性能」だけが優れた技術ではない
私たちは、
技術というと、
高性能CPU。
AI。
高速通信。
巨大サーバー。
を想像します。
でも、
QRコード。
紙に印刷できる。
電源不要。
安い。
カメラで読める。
標準化されている。
多少の汚れにも強い。
つまり、
技術の価値は、
「どれだけ複雑か」
ではない。
「目的に対して、
どれだけ合理的か」。
QRコードは、
その好例なのかもしれません。
41.第18回との決定的な違い
前回。
クレジットカード。
主役は、
信用。
カード会社などが、
利用者へ信用を供与する。
今日。
商品。
未来。
支払い。
「時間をつなぐ。」
今回。
QRコード。
主役は、
接続。
現実世界の、
店。
利用者。
スマートフォン。
そこから、
デジタルの決済システムへ入る。
「現実とデジタルをつなぐ。」
つまり、
金融インフラ編は、
少しずつ、
違う役割を見せています。
42.金融インフラ編を並べてみる
第5回。
キャッシュレス
情報で、
支払いを成立させる。
↓
第16回。
ATM
デジタルな口座情報を、
物理的な現金へ変える。
↓
第17回。
銀行振込
離れた銀行の記録を、
矛盾なく変える。
↓
第18回。
クレジットカード
信用によって、
今日と未来をつなぐ。
↓
第19回。
QRコード決済
現実世界の画像から、
デジタル決済へ入る。
こうして見ると、
「お金」という一言の後ろに、
ものすごく多くの技術が、
隠れている。
43.もしQRコードがなかったら?
QRコード決済が、
絶対に必要?
もちろん、
そんなことはありません。
カード。
電子マネー。
現金。
銀行振込。
他にも、
支払い方法はあります。
でも、
QRコードには、
独特の強みがある。
カメラで読める。
画面に表示できる。
紙にも印刷できる。
専用ハードウェアを、
減らせる場合がある。
標準化された技術を、
利用できる。
つまり、
「既にあるスマートフォン」
と、
「非常に安価な情報表示」
を組み合わせて、
決済インフラへの入口を、
広げられる。
だから、
QRコード決済は、
急速に普及できた。
単に、
「新しいから」
ではありません。
導入の入口が軽い。
ここが、
重要なのです。
44.未来はQRコードすら見えなくなる?
これから、
決済は、
さらに、
見えなくなるかもしれません。
タッチ。
生体認証。
アプリ。
自動決済。
店舗によっては、
会計操作そのものを、
減らす仕組みも考えられる。
では、
QRコードは、
消える?
それは、
分かりません。
技術には、
それぞれ、
得意な場所があります。
安価。
印刷可能。
汎用カメラで読める。
特別な電源を必要としない。
そうした、
QRコードの強みは、
かなり大きい。
だから、
最新技術が登場したからといって、
古い技術が、
必ず消えるとは限らない。
このシリーズで、
何度も見てきた通りです。
「合理的な技術は、
形を変えながら残る。」
45.では、最初の質問へ戻ろう
QRコード決済は、
なぜ「あの四角」を読むだけで支払えるのか?
答え。
「あの四角の中に、
お金が入っているから」
ではありません。
QRコードが、
店舗や利用者など、
決済に必要な情報を、
機械が読み取れる形で渡す。
↓
スマートフォンや店舗システムが、
その情報を使う。
↓
インターネットを通じて、
決済事業者へ、
取引を指示する。
↓
利用者の支払い手段などを使って、
決済が処理される。
↓
店舗と利用者が、
取引成立を確認する。
つまり、
QRコードは、
「お金」ではない。
「お金を動かす巨大システムへの入口」。
なのです。
46.あの四角は「ドア」だった
QRコードを、
もう一度、
見てみましょう。
白。
黒。
小さな四角。
ただの、
印刷。
でも、
スマートフォンを、
向ける。
すると、
その先に、
決済事業者。
銀行。
カード。
アカウント。
ネットワーク。
店舗システム。
巨大な金融インフラが、
現れる。
だから、
あのQRコードは、
金庫ではありません。
財布でもありません。
「ドア」。
です。
しかも、
現実世界から、
デジタル金融へ入る、
「画像でできたドア」。
しろくまのひとこと
今回、
QRコード決済を調べて、
一番面白かったのは、
最先端のキャッシュレス決済の入口が、
意外なほど、
「単純」
だったことです。
紙。
白。
黒。
四角。
電源なし。
通信なし。
CPUなし。
それなのに、
スマートフォンを、
かざすと、
巨大な金融システムへ、
つながる。
最初は、
QRコードが、
すごい技術だからだと思っていました。
もちろん、
QRコードそのものも、
非常によくできています。
高速に読み取れる。
向きに強い。
誤り訂正。
標準化。
でも、
もっと面白いのは、
「役割分担」。
でした。
QRコード。
情報を渡す。
スマートフォン。
読む。通信する。
アプリ。
利用者と決済サービスをつなぐ。
決済事業者。
取引を処理する。
銀行やカードなど。
価値を支える。
店舗。
商品を渡す。
誰か一人が、
全部やっているわけではない。
単純な部品を、
つないで、
巨大な仕組みにする。
これ、
まさに、
文明です。
そして、
もう一つ。
QRコードは、
高価な専用機械ではありません。
紙にも、
印刷できる。
つまり、
巨大な金融システムへの入口を、
「一枚の紙」
にまで、
小さくできた。
これは、
かなりすごい。
巨大なシステムほど、
入口は、
小さくなっていく。
インターネット。
URL。
銀行。
ATM。
クレジットカード。
そして、
QRコード。
私たちが触るのは、
いつも、
「末端」。
その後ろにある、
巨大な仕組みは、
見えない。
だから、
今回の答え。
「QRコードの中に、
お金は入っていない。」
入っているのは、
「決済システムへ入るための情報」。
そして、
その情報を、
スマートフォンが読み、
ネットワークが運び、
決済事業者が処理し、
金融システムが、
価値の移動を支える。
だから、
「あの四角を読むだけで、
支払える。」
第17回。
「お金は動く。でも、紙幣は動かない。」
第18回。
「まだ払っていない。でも、買い物は終わる。」
そして、
第19回。
「ただの画像。でも、その先に金融システムがある。」
「QRコードは、お金ではない。お金への入口。」
「QRは入口。お金の出どころは、その奥にある。」
「紙の四角から、デジタル金融へ。」
「巨大なシステムほど、入口は小さくなる。」
「表側が簡単になるほど、裏側は巨大になる。」
そして、
今回も。
「見えなくなったところから、文明は面白くなる。」
次回予告
当たり前を支える技術 第20回
ICカードは、なぜ「かざすだけ」で改札や支払いができるのか?
――ICチップ・無線通信・認証・残高情報が「触れずに読み書きする」を実現する仕組み
QRコード。
カメラで読む。
では、
交通系ICカード。
タッチ。
なぜ、
一瞬?
カードに、
電池は入っている?
改札機は、
何を読んでいる?
QRコードとは、
何が違う?
次回は、
「触れていないのに、
なぜ情報を読み書きできるのか?」
あの、
「ピッ」の、
さらに奥へ入ります。
参考書籍
📚 あの「白黒の四角」を、もう少し知りたい人へ
今回の記事では、
こんな疑問から始まりました。
「QRコードの中に、お金は入っている?」
もちろん、
答えは、
入っていません。
QRコードは、
お金ではない。
銀行でもない。
決済事業者でもない。
QRコードがしているのは、
「情報を、機械が読み取れる形で渡すこと」。
そして、
スマートフォン。
インターネット。
決済事業者。
銀行。
カード。
店舗システム。
そうした巨大な仕組みへ、
私たちをつないでいる。
だから、
今回の記事では、
QRコードを、
「デジタル金融への、小さなドア」
と表現しました。
では、
そもそも、
この不思議な白黒の四角は、
どこから来たのでしょう?
そこで、
今回おすすめするのが、
この一冊です。
メイン参考書籍
『QRコードの奇跡――モノづくり集団の発想転換が革新を生んだ』
小川 進 著/東洋経済新報社
(👉 Amazonリンク)
🐻 しろくま的ポイント①
QRコードは「決済のため」に生まれたわけではない
今では、
QRコードを見ると、
スマートフォン。
Webサイト。
そして、
QRコード決済。
そんなものを、
思い浮かべます。
でも、
QRコードの出発点は、
そこではありません。
本書が追いかけるのは、
トヨタの生産現場で使われていた、
「かんばん」。
そして、
その情報を電子化していく、
製造現場の試行錯誤です。
つまり、
QRコードは、
最初から、
「世界中の人がスマートフォンで読むコード」
として、
設計されたわけではない。
まして、
「お金を払うためのコード」
として、
誕生したわけでもない。
工場。
物流。
情報管理。
そうした、
かなり実務的な問題を解決しようとした結果、
生まれた技術でした。
そこから、
世界中のスマートフォンへ。
そして、
決済へ。
この変化を知るだけでも、
QRコードを見る目が、
かなり変わります。
🐻 しろくま的ポイント②
なぜ「バーコード」では足りなかった?
スーパーの商品。
段ボール箱。
宅配便。
私たちは、
QRコードより前から、
バーコードを使っていました。
では、
なぜ、
新しいコードが必要だったのでしょう?
理由の一つは、
「もっと多くの情報を扱いたい」。
一次元のバーコードから、
二次元へ。
横方向だけでなく、
縦方向にも、
情報を持たせる。
すると、
小さな面積でも、
より多くの情報を扱える。
でも、
問題は、
情報量だけではありません。
現場で使うなら、
「素早く読める」
ことも必要。
工場で、
毎回、
コードの向きを、
きれいに合わせていたら、
仕事になりません。
そこで、
Quick Response。
素早く応答する。
名前そのものが、
QRコードの設計思想を、
表しています。
🐻 しろくま的ポイント③
あの「三つの四角」にも理由がある
QRコードを見ると、
角のところに、
目立つ、
大きな四角があります。
ただの、
デザインではありません。
読み取り機が、
「ここにQRコードがある」
「この向きだ」
と、
素早く認識するための、
重要な仕掛けです。
今回の記事でも、
QRコードは、
多少傾いていても、
読み取りやすい。
という話をしました。
普段は、
ただの白黒模様。
でも、
一つ一つの形には、
ちゃんと、
理由がある。
本書を読みながら、
実際のQRコードを、
眺めてみる。
それだけでも、
かなり面白いと思います。
🐻 しろくま的ポイント④
「少し壊れても戻れる」技術
今回の記事で、
しろくま的に、
かなり気になった部分。
それが、
誤り訂正。
QRコード。
少し汚れた。
少し傷ついた。
一部が、
読みにくい。
それでも、
一定範囲なら、
情報を復元できる。
つまり、
設計思想は、
「絶対に壊れない」
ではありません。
「多少壊れることを前提に、
それでも使えるようにする」。
これ。
このブログを、
長く読んでいる人なら、
どこかで、
聞いた覚えがあるかもしれません。
人体シリーズ。
「健康とは、
何も壊れていない状態ではなく、
壊れても戻れる状態。」
そして、
文明インフラ。
「故障をゼロにするだけでなく、
故障しても戻れるようにする。」
QRコードも、
まったく同じ技術という意味ではありません。
でも、
設計思想として見ると、
面白い。
現実世界は、
完璧ではない。
汚れる。
傷つく。
傾く。
光が反射する。
だから、
「完璧な環境でだけ動く技術」
では、
社会インフラにはなりにくい。
現実の不完全さを、
受け入れる。
これも、
「当たり前を支える技術」に、
共通する考え方なのかもしれません。
🐻 しろくま的ポイント⑤
本当にすごいのは「国際標準」になったこと
QRコードのすごさを、
情報量。
読み取り速度。
誤り訂正。
だけで説明すると、
大事なものを、
一つ、
見落とします。
それが、
標準化。
です。
どれだけ優れたコードでも、
一社しか使えない。
一種類の機械でしか読めない。
特定の業界でしか使えない。
それでは、
世界的なインフラには、
なりにくい。
QRコードは、
工場から始まり、
さまざまな用途へ広がり、
国際標準になっていきました。
本書では、
この、
「一企業の技術が、
社会で使われる共通技術へ変わっていく過程」
も、
重要なテーマになっています。
これは、
第19回の記事で触れた、
「標準化もインフラ」
という話を、
もっと深く理解するのに、
非常に面白い部分です。
🐻 しろくま的ポイント⑥
技術を「囲い込まない」という選択
普通、
優れた技術を作ったら、
どう考えるでしょう?
特許。
ライセンス。
独占。
利益。
そんな言葉が、
浮かびます。
ところが、
QRコードが、
世界中へ広がった背景を考えると、
「どう普及させるか」
という問題が、
非常に重要になります。
優れた技術を、
自社だけのものとして囲う。
それも、
一つの戦略。
でも、
多くの企業。
多くの業界。
多くの機械。
多くの人。
それらが、
共通して使えるようにする。
すると、
技術そのものが、
「社会の共通言語」
になっていく。
ここは、
単なるQRコードの技術解説を超えて、
非常に面白いところです。
「技術は、
独占すると価値が上がるのか?」
それとも、
「みんなが使うことで、
価値が上がる技術もあるのか?」
QRコードは、
後者を考える、
とても良い題材です。
🐻 しろくま的ポイント⑦
「利用者が用途を増やした」という面白さ
QRコードは、
工場で生まれました。
でも、
今では、
工場だけで、
使われているでしょうか?
もちろん、
違います。
商品管理。
チケット。
航空。
Webサイト。
広告。
入場管理。
物流。
決済。
さまざまな用途があります。
つまり、
開発者が、
最初から、
すべての用途を、
予想していたわけではない。
技術が、
社会へ出る。
↓
利用者が、
「これにも使えるのでは?」
と考える。
↓
新しい用途が生まれる。
↓
さらに、
普及する。
技術は、
発明された瞬間に、
完成するとは限らない。
社会へ出て、
使われ、
新しい用途が発見され、
成長していく。
これも、
このシリーズのテーマと、
かなり相性がいい。
「技術も、完成品ではない。」
使われながら、
役割を増やしていく。
🐻 しろくま的ポイント⑧
第19回の記事とは「表と裏」の関係
今回の記事は、
「QRコード決済は、
どう動いている?」
という話でした。
QRコード。
↓
スマートフォン。
↓
インターネット。
↓
決済事業者。
↓
銀行・カード・残高。
つまり、
「現在の仕組み」。
一方、
『QRコードの奇跡』が、
面白いのは、
「なぜ、
そんな入口を作れる技術が生まれた?」
を、
さかのぼれるところ。
記事。
「今、どう動いている?」
↓
本。
「なぜ、この技術が存在する?」
この組み合わせが、
今回の参考書籍として、
かなり相性がいいと思います。
🐻 しろくま的ポイント⑨
「決済の本」ではないところが、むしろいい
注意点も、
一つ。
この本は、
QRコード決済の実務マニュアル
ではありません。
CPM。
MPM。
銀行口座。
チャージ残高。
決済事業者。
店舗精算。
そうした、
現在のQRコード決済の細かな仕組みを、
体系的に学ぶための専門書ではありません。
主役は、
QRコードという技術そのもの。
その誕生。
開発。
標準化。
用途の拡大。
そして、
イノベーション。
です。
だからこそ、
今回の記事と、
内容が重複しすぎない。
記事で、
「QR決済の仕組み」
を知る。
本で、
「そもそもQRコードは、
どうやって世界へ広がった?」
を知る。
この二段構成が、
おすすめです。
もう一冊読むなら
『図解即戦力 キャッシュレス決済がこれ1冊でしっかりわかる教科書』
キャッシュレス決済研究会 著/山本正行 監修/技術評論社
(👉 Amazonリンク)
こちらは、
第18回でも紹介した一冊。
クレジットカード。
電子マネー。
QRコード決済。
など、
キャッシュレス決済全体を、
図解で俯瞰するための本です。
つまり、
役割を分けると、
『QRコードの奇跡』
「QRコードという技術は、
どこから来た?」
『キャッシュレス決済がこれ1冊でしっかりわかる教科書』
「そのQRコードを使った決済は、
キャッシュレス全体のどこにいる?」
この二冊は、
競合するというより、
「技術の歴史」
と、
「決済の地図」
という、
別の方向から、
今回の記事を補ってくれます。
こんな人におすすめ
今回の記事を読んで、
こんなことが気になった人。
「そもそも、
QRコードは誰が作った?」
「なぜ、
あの三つの四角がある?」
「なぜ、
向きが違っても読める?」
「バーコードでは、
何が足りなかった?」
「なぜ、
日本で生まれた技術が、
世界中で使われるようになった?」
「なぜ、
QRコードを自由に使える?」
「国際標準になるって、
どういうこと?」
「工場の技術が、
どうしてスマホ決済にまで来た?」
そんな人には、
かなり面白い、
一冊だと思います。
しろくまのおすすめ読書ルート
まず、
第19回。
QRコード決済は、
なぜ「あの四角」を読むだけで支払えるのか?
↓
QRコードは、
「お金ではなく、
決済システムへの入口」
だと理解する。
↓
次に、
『QRコードの奇跡』
↓
工場。
バーコード。
QRコード開発。
標準化。
用途拡大。
世界へ。
という、
技術の旅を追う。
↓
さらに、
キャッシュレス決済全体が気になったら、
『
図解即戦力
キャッシュレス決済がこれ1冊でしっかりわかる教科書
』
へ。
この順番なら、
「現在の仕組み」
↓
「技術の歴史」
↓
「決済全体の地図」
と、
理解を広げられます。
しろくまのひとこと
今回、
参考書籍を選んでいて、
改めて思いました。
QRコードって、
不思議な技術です。
見た目は、
地味。
白。
黒。
四角。
それだけ。
AIのように、
考えない。
スマートフォンのように、
画面もない。
電池もない。
通信もしない。
なのに、
世界中で、
使われている。
なぜ?
たぶん、
答えの一つは、
「自分で全部やろうとしなかったから」。
なのかもしれません。
QRコードは、
情報を渡す。
それだけ。
通信は、
スマートフォンに任せる。
処理は、
コンピューターに任せる。
決済は、
決済事業者に任せる。
お金は、
金融システムに任せる。
自分は、
「情報を、
素早く正確に渡す」。
その仕事に、
徹する。
でも、
その単純な部品を、
世界共通で使えるようにした。
すると、
工場。
物流。
航空。
チケット。
広告。
Web。
そして、
決済。
いろいろな仕組みが、
QRコードを、
自分たちの入口として、
使い始めた。
これ、
文明そのものに、
少し似ています。
一つの技術が、
全部をやるのではない。
それぞれが、
自分の仕事をする。
そして、
つながる。
「単純な部品をつないで、
巨大な仕組みを作る。」
今回の記事では、
QRコードを、
「画像でできたドア」
と呼びました。
本を読むと、
もう一つ、
付け加えたくなります。
「誰でも使えるドアになったから、
世界中に入口を作れた。」
QRコード。
ただの、
白黒の四角。
でも、
その四角を、
スマートフォンで読む。
その瞬間。
現実世界と、
デジタル世界が、
つながる。
そして、
決済なら、
そのさらに奥で、
金融システムまで、
つながる。
だから、
第19回の最後に、
もう一度。
「QRコードは、お金ではない。お金への入口。」
「ただの画像。でも、その先に金融システムがある。」
「巨大なシステムほど、入口は小さくなる。」
そして、
「優れたインフラは、自分の存在を主張しない。」
私たちは、
QRコードを、
毎日のように見ています。
でも、
ほとんどの場合、
そのすごさを、
意識しない。
それくらい、
当たり前になった。
もしかすると、
それこそが、
「当たり前を支える技術」
として、
一番成功した姿なのかもしれません。
「表側が簡単になるほど、裏側は巨大になる。」
そして、



